困ってるズ!連載コラム
2016/09/17 (Sat) 19:10
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困ってるズ!連載コラム
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こんにちは、困ってるズ!編集担当の大谷です。
今回は、連載『戸村サキの崖っぷちブルース~メンタルヘルスあれこれ~』第五回目をお届けします。
Twitterで感想を呟かれる際は、「#崖ブル」を忘れずに! どうぞ、お楽しみください。
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【戸村サキの崖っぷちブルース ~メンタルヘルスあれこれ~第五回】
皆さんこんにちは。今日は辛い話をするぜ、戸村サキです。
私の身長は155センチです。高校卒業くらいから変わっておりません。
幼い頃は少々ぽっちゃりしていたようですが、それでも標準よりは痩せている方でした。具体的に言えば45キロ前後。
高校一年の発病前、ストレスで嘔吐癖がついてしまい、吐きだこはない、っていうか指を使わなくても臨機応変自由自在に吐ける、という妙な体質になりました。摂食障害という概念は当時あまり知らなかったのですが、その頃から私はメンタルに負担がかかると食べられなくなり、嘔吐する性質でした。
しかし今、私の体重は67キロあります。
忘れもしない2010年の年明けから、どういうわけか拒食傾向から過食傾向にシフトチェンジしたのです。
「なんか食べないと落ち着かない」
「後で吐けるから食べよう」
「こんなに辛いよりは太った方がマシだ」
そんな風に考えるようになり、結果、過食嘔吐に近い状態になりました。
「自分は痩せている」という幼い頃からの認識・思い込み、もっと言えばアイデンティティ、これが裏目に出ました。「ちょっとくらい食べても大丈夫」。しばらくして、母に「体重を測った方がいい」と言われ、恐る恐る体重計に乗ってみると、52キロありました。
これはヤバい、太ってしまった。
危機感を覚えた私は、運動は嫌いですが、ウォーキングを始めて、食事も制限し、50キロ前後はキープできるようになりました。まあまあ、標準体型でしょうか。
で、今の夫とお付き合いを始めました。
何なんでしょうね、アレは幸せ太りというやつですかね、今となっては分かりませんが、今度は体重計が55キロを指しました。
「やべえ、身長から100引けなくなる」
そういえば最近スキニーのパンツが入りにくい。これはまずい。
それでもまだ、心のどこかで、「私は痩せ型である」という思い込みがあったと思います。
上京した時、言うまでもなくボトムスは全部持ってきていました。
流石に高校時代に履いていたスキニーデニムは無理でしたが、上京から一年は問題ありませんでした。
現在の主治医と出会い、去年の秋、「太りやすくなるけど」という忠告のもと、薬をいくつか変更しました。
三ヶ月後には7キロ増え、62キロになっていました。
最初に体重計がその数値を表示した時は、さほど狼狽しませんでした。
「薬のせいだからな~」
そう思い、ウォーキングを続けました。
しかし、少しずつ、私は自分の身体の変化に気づきます。
ズボンが入らない。入ってもウエストがきつい。腹が目立つ。胸回りがぽよぽよしておる。
私は顔の下、あご周りに肉がつきやすい体質で、明らかに二重あごになりつつありました。
これは、今回ばかりは、本当にヤバくねーか?
実家に帰った際、母親がカットソー一枚の私の姿を見て、
「あんた、ブラジャー合ってないんじゃないの?」
と言い出しました。
試しに、ふくよかな彼女のブラジャー、アンダーバスト85のものを着用すると、何だか楽でした。それまでは75を着用していましたから、当然と言えば当然です。
高校時代からその時まで、私は75のBかCを買っていましたが、下着屋さんに行ってサイズを測ってみると、85のDカップ。
は、はちじゅうご……
ででで、でーかっぷ……
しかし真の恐ろしさはサイズではありませんでした。
私は、レースなどが多用されたオトナ~なブラジャ~は苦手で、カジュアルな若者向けのものを好んでいたのですが、そういったメーカーはせいぜいサイズが80まで。85はあったりなかったり、あっても目玉が飛び出すほど高価だったり。
ふくよかでも巨乳でもカジュアルなブラしたいわ!巨乳差別だ!!
……と憤ってみるも、胸に残るのは太ってしまった自己嫌悪とむなしさ、屈辱のみ。
私には、摂食障害と戦う・戦ったことのある友人が、片手がふさがる程度います。
彼女たちの闘いを見ていると、自分の嘔吐癖や過食傾向、体重増加はたいしたものではない、そう考えていました。ある友人は、メンタルの好不調で20キロ体重が上下するので、「サキなんかまだマシだよ」と言います。
しかしどうでしょう。薬の副作用と運動不足とはいえ、私は急激に、爆発的に太りました。食べる量はさほど変わっていませんし、太りやすくなるという薬は極力削っています。
それでももう、私は痩せた人を見るのも、ふくよかな人を見るのも、恐くて仕方がないのです。
スリムな女性を見ると、
「私もちょっと前までああだったのに」
と悔しがり、ふくよかな人を見ると、
「私もああ見えているのだ」
あるいは、
「私もああなってしまうのではないか」
と自己嫌悪&予期不安発生。
それにしても、これは日本のみならず世界的に言えることだと思いますが、いわゆる「痩せ信仰」、これはどうしてかくも根強く女性を苦しめるのでしょう。
私自身は、自分が長年痩せ型だった、という認識の強さゆえ、今の自分の体型を受け入れられない、という面があると考えています。
閉鎖病棟への入院時、拒食症で普通の食事を摂れない女性と出会った時、スリムさが美徳とされる痩せ至上主義に強い疑念を抱きました(彼女はダイエットの結果の拒食でした)。
なのに、拒食症やガリガリの体型の人々を、今度は貧相だとあざ笑う人もいます。
じゃあ、なに。
正しい体型って、なに。
そんなものはないんです。当人が過ごしやすく、かつ何らかの疾患や病気を孕まない程度であれば、スタイルなんて自分で決めればいいと、私は思うんです。
また、「太っている奴は、自己管理ができないダメな人間」という言説もどうかと思います。太る理由は、もちろん本当に自己管理が不得手な人もいますが、薬のせいであったり、病気の症状であったり、一概にネガティブな要因が理由とは言えません。
現在私は、女性向けのジムに通っています。まだまだ効果は現れませんが、年単位で考えようと思っています。
それから、LLサイズが入らなくなって手持ちのボトムスが全滅し、「私はもうおしゃれができないんじゃないか、おしゃれをする資格すらないのではないか」と泣きましたが、某ブランドのかわいいサルエルパンツやバルーンパンツを購入し、いつか昔のスキニーを履くことを目標に日々努力しています。
今回は「摂食障害」とは題さず、あくまでも私の体験・実感を書かせていただきました。レリゴーとか、ありのままでいい、とは、私は全ての人には言えません。ただ、世にはびこる痩せ信仰に、「そんなんどーでもよくね?」と吐き捨てるだけ吐き捨てて、また次回。
戸村サキ(とむら・さき)
1983年生まれ、「哀愁のチバラキ」出身。解離性障害と鬱病を併発。回復に向かいかけた矢先に夫が不安定に。ケアしつつされつつ、書かせていただけるお仕事を募集中。過去連載に「傷の数だけ理由(ワケ)がある」( http://mess-y.com/archives/category/seriesend/kizuwake )
Twitter:@sakitrack
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遠藤まめた氏との対バンブログ:http://404notcured.wpblog.jp/
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編集長:大野更紗+荻上チキ
編集:大谷佳名
進行管理:久保健一郎(わたしのフクシ。)
発行:わたしのフクシ。+株式会社シノドス
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こんにちは、困ってるズ!編集担当の大谷です。
今回は、連載『戸村サキの崖っぷちブルース~メンタルヘルスあれこれ~』第五回目をお届けします。
Twitterで感想を呟かれる際は、「#崖ブル」を忘れずに! どうぞ、お楽しみください。
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【戸村サキの崖っぷちブルース ~メンタルヘルスあれこれ~第五回】
皆さんこんにちは。今日は辛い話をするぜ、戸村サキです。
私の身長は155センチです。高校卒業くらいから変わっておりません。
幼い頃は少々ぽっちゃりしていたようですが、それでも標準よりは痩せている方でした。具体的に言えば45キロ前後。
高校一年の発病前、ストレスで嘔吐癖がついてしまい、吐きだこはない、っていうか指を使わなくても臨機応変自由自在に吐ける、という妙な体質になりました。摂食障害という概念は当時あまり知らなかったのですが、その頃から私はメンタルに負担がかかると食べられなくなり、嘔吐する性質でした。
しかし今、私の体重は67キロあります。
忘れもしない2010年の年明けから、どういうわけか拒食傾向から過食傾向にシフトチェンジしたのです。
「なんか食べないと落ち着かない」
「後で吐けるから食べよう」
「こんなに辛いよりは太った方がマシだ」
そんな風に考えるようになり、結果、過食嘔吐に近い状態になりました。
「自分は痩せている」という幼い頃からの認識・思い込み、もっと言えばアイデンティティ、これが裏目に出ました。「ちょっとくらい食べても大丈夫」。しばらくして、母に「体重を測った方がいい」と言われ、恐る恐る体重計に乗ってみると、52キロありました。
これはヤバい、太ってしまった。
危機感を覚えた私は、運動は嫌いですが、ウォーキングを始めて、食事も制限し、50キロ前後はキープできるようになりました。まあまあ、標準体型でしょうか。
で、今の夫とお付き合いを始めました。
何なんでしょうね、アレは幸せ太りというやつですかね、今となっては分かりませんが、今度は体重計が55キロを指しました。
「やべえ、身長から100引けなくなる」
そういえば最近スキニーのパンツが入りにくい。これはまずい。
それでもまだ、心のどこかで、「私は痩せ型である」という思い込みがあったと思います。
上京した時、言うまでもなくボトムスは全部持ってきていました。
流石に高校時代に履いていたスキニーデニムは無理でしたが、上京から一年は問題ありませんでした。
現在の主治医と出会い、去年の秋、「太りやすくなるけど」という忠告のもと、薬をいくつか変更しました。
三ヶ月後には7キロ増え、62キロになっていました。
最初に体重計がその数値を表示した時は、さほど狼狽しませんでした。
「薬のせいだからな~」
そう思い、ウォーキングを続けました。
しかし、少しずつ、私は自分の身体の変化に気づきます。
ズボンが入らない。入ってもウエストがきつい。腹が目立つ。胸回りがぽよぽよしておる。
私は顔の下、あご周りに肉がつきやすい体質で、明らかに二重あごになりつつありました。
これは、今回ばかりは、本当にヤバくねーか?
実家に帰った際、母親がカットソー一枚の私の姿を見て、
「あんた、ブラジャー合ってないんじゃないの?」
と言い出しました。
試しに、ふくよかな彼女のブラジャー、アンダーバスト85のものを着用すると、何だか楽でした。それまでは75を着用していましたから、当然と言えば当然です。
高校時代からその時まで、私は75のBかCを買っていましたが、下着屋さんに行ってサイズを測ってみると、85のDカップ。
は、はちじゅうご……
ででで、でーかっぷ……
しかし真の恐ろしさはサイズではありませんでした。
私は、レースなどが多用されたオトナ~なブラジャ~は苦手で、カジュアルな若者向けのものを好んでいたのですが、そういったメーカーはせいぜいサイズが80まで。85はあったりなかったり、あっても目玉が飛び出すほど高価だったり。
ふくよかでも巨乳でもカジュアルなブラしたいわ!巨乳差別だ!!
……と憤ってみるも、胸に残るのは太ってしまった自己嫌悪とむなしさ、屈辱のみ。
私には、摂食障害と戦う・戦ったことのある友人が、片手がふさがる程度います。
彼女たちの闘いを見ていると、自分の嘔吐癖や過食傾向、体重増加はたいしたものではない、そう考えていました。ある友人は、メンタルの好不調で20キロ体重が上下するので、「サキなんかまだマシだよ」と言います。
しかしどうでしょう。薬の副作用と運動不足とはいえ、私は急激に、爆発的に太りました。食べる量はさほど変わっていませんし、太りやすくなるという薬は極力削っています。
それでももう、私は痩せた人を見るのも、ふくよかな人を見るのも、恐くて仕方がないのです。
スリムな女性を見ると、
「私もちょっと前までああだったのに」
と悔しがり、ふくよかな人を見ると、
「私もああ見えているのだ」
あるいは、
「私もああなってしまうのではないか」
と自己嫌悪&予期不安発生。
それにしても、これは日本のみならず世界的に言えることだと思いますが、いわゆる「痩せ信仰」、これはどうしてかくも根強く女性を苦しめるのでしょう。
私自身は、自分が長年痩せ型だった、という認識の強さゆえ、今の自分の体型を受け入れられない、という面があると考えています。
閉鎖病棟への入院時、拒食症で普通の食事を摂れない女性と出会った時、スリムさが美徳とされる痩せ至上主義に強い疑念を抱きました(彼女はダイエットの結果の拒食でした)。
なのに、拒食症やガリガリの体型の人々を、今度は貧相だとあざ笑う人もいます。
じゃあ、なに。
正しい体型って、なに。
そんなものはないんです。当人が過ごしやすく、かつ何らかの疾患や病気を孕まない程度であれば、スタイルなんて自分で決めればいいと、私は思うんです。
また、「太っている奴は、自己管理ができないダメな人間」という言説もどうかと思います。太る理由は、もちろん本当に自己管理が不得手な人もいますが、薬のせいであったり、病気の症状であったり、一概にネガティブな要因が理由とは言えません。
現在私は、女性向けのジムに通っています。まだまだ効果は現れませんが、年単位で考えようと思っています。
それから、LLサイズが入らなくなって手持ちのボトムスが全滅し、「私はもうおしゃれができないんじゃないか、おしゃれをする資格すらないのではないか」と泣きましたが、某ブランドのかわいいサルエルパンツやバルーンパンツを購入し、いつか昔のスキニーを履くことを目標に日々努力しています。
今回は「摂食障害」とは題さず、あくまでも私の体験・実感を書かせていただきました。レリゴーとか、ありのままでいい、とは、私は全ての人には言えません。ただ、世にはびこる痩せ信仰に、「そんなんどーでもよくね?」と吐き捨てるだけ吐き捨てて、また次回。
戸村サキ(とむら・さき)
1983年生まれ、「哀愁のチバラキ」出身。解離性障害と鬱病を併発。回復に向かいかけた矢先に夫が不安定に。ケアしつつされつつ、書かせていただけるお仕事を募集中。過去連載に「傷の数だけ理由(ワケ)がある」( http://mess-y.com/archives/category/seriesend/kizuwake )
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編集長:大野更紗+荻上チキ
編集:大谷佳名
進行管理:久保健一郎(わたしのフクシ。)
発行:わたしのフクシ。+株式会社シノドス
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